乳児、幼児に多い「誤飲」「誤嚥」事故とその応急処置方法です。
◆ 誤飲
子どもが飲み込むと危険なものを飲み込んだ場合が誤飲です。
体内に入ってもさほど問題がないものから、とても危険なものまであります。
子どもの誤飲に気がついたら、なるべく落ち着いて対処してください。
まずは、誤飲したものを特定することが大切です。
◇誤飲するサイズ
フィルムケースを通過するものは誤飲する可能性があります。
◇誤飲が増える時間帯
母親が忙しい時間帯。炊事のときに多く発生します。
監視する人が少ない時間帯。お昼寝が終わったころも、大人が気づかないこともあります。
◇急を要する誤飲
誤飲し次の状態になっている場合は救急車を呼びます。
・意識がないまたは意識が混濁している。
・けいれんを起こしている。
・呼吸がない
◇誤飲の危険度
危険度 | 誤飲したもの | 対処法 |
ほぼ無 | クレヨン、口紅、シリカゲル、線香、化粧クリーム | 食べても害はありません |
小 | 石けん、シャンプー、食器洗い洗剤、化粧水など | ほとんど心配はありませんが、特に量が多かった場合は注意が必要です |
中 | タバコ3分の2以下、ボタン電池など | 診療時間内に医療機関に行きましょう |
大 | タバコ3分の2以上、ホウ酸だんご、漂白剤、ナフタリン、除光液、タバコの吸殻の汁など | 診療時間外でも救急外来へ行きましょう |
以上はあくまで目安です。
誤飲した量や種類などによっても危険度は上下します。
固形物は中毒の心配は少ないですが、呼吸機能が低下する恐れがあります。
経過をよく見守って、様子に心配なことがあれば医師にかかるようにしてください。
◇全国共通の中毒相談センター
・誤飲による中毒症状の相談を受け付けます。
・タバコの誤飲事故専用電話
072−726−9922(24時間対応 年中無休)
音声テープによる情報案内です。
◇吐かせ方
①指をのどの奥に入れて、舌を押す
②頭を下にして背中をたたく
腹部を圧迫するように上にあげるようにする
・小さい赤ちゃんの場合は立てひざではなく、座ったままします
液体などの誤飲は水か牛乳を飲ませて、吐かせます。
吐きやすくするためと、のどや食道、消化器官などの粘膜を守る役割があります。
◇吐かせてはいけない場合
異物は早く体内から除去しなくてはいけませんが、吐かせてしまうことが逆効果になる場合があります。
吐かせてはいけないものには、石油、強アルカリ性、強酸性、くぎなど鋭利なものがあります。
誤飲したもの | 吐かせる | 飲ませるもの | 医療機関にかかる目安 | |
水 | 牛乳 | |||
強酸性・強アルカリ性洗剤 | × | ○ | ○ | すぐに救急へ |
漂白剤 | × | ○ | ○ | すぐに救急へ |
灯油・ベンジン | × | × | × | 0.5ml以上は救急へ |
防腐剤(ショウノウ) | × | ○ | × | すぐに救急へ |
防腐剤(ナフタリン) | ○ | ○ | × | すぐに救急へ |
防腐剤(パラチクロールベンゾール) | ○ | ○ | ○ | 1g以上は救急へ |
殺虫剤(ピレスロイド系) | × | × | × | 1ml以上は救急へ |
殺虫剤(ホウ酸系) | ○ | ○ | ○ | 1g以上は救急へ |
中性洗剤 | × | ○ | ○ | 5g以上は病院へ |
マニキュア・除光液 | × | × | × | 2ml以上は病院へ |
リンス・化粧水 | ○ | ○ | ○ | 10ml以上は病院へ |
医薬品 | ○ | △ | △ | 薬の種類によって違います。 |
タバコ | ○ | × | × | 2cm以上は救急へ |
タバコの吸殻の汁 | ○ | × | × | すぐに救急へ |
画鋲・ピン | × | × | × | 吐かない場合すぐに救急へ |
以上は目安です。
誤飲した量が少ないなど医療機関を受診しない場合は、その後の経過に注意してください。
元気がなくなった、ぐったりするなど心配な様子が見られたら、医療機関を受診してください。
◇よくある誤飲のケース
・タバコ
その中でも一番多いケースは、空き缶や食器など灰皿以外のものを灰皿に使用し、子どもが飲み物と間違えて飲んでしまうケースです。
タバコの有害成分でもあるニコチンは水溶性なので、空き缶に残った液体に濃縮されています。
誤飲に気づいたら、すぐに救急外来の受診を受けてください。
ニコチンは液体に溶け体内に吸収されるため飲ませないでください。
・タバコ(ニコチン)の中毒症状
嘔吐、よだれの増加、腹痛、下痢、めまい、頭痛、けいれん、興奮、呼吸停止など
・タバコ誤飲事故専用電話(年中無休24時間対応)
072−726−9922
音声による情報案内です。
・医薬品
大人が薬を飲む習慣を子どもは見ているものです。
興味本位で真似して誤飲してしまうケースがあります。
また、菓子類などの空き缶に保管していた場合、食べ物だと誤飲することもあります。
医薬品は、救急箱など適切な箱に入れ、子どもの手の届かない場所に保管しましょう。
特に生後6ヶ月過ぎたころから引き出しを開けることができるようになります。
子どもの成長は早いものです。早めに医薬品の置き場所を考えましょう。
・化粧品
小さい子どもの目線では、化粧品を飲んでいるふうに見えることもあるかもしれません。
口紅は誤って口に塗ったり、口に含んだりしても、人体に害はないものなので少量ならば心配はないでしょう。
化粧水やクリームなどもそうですが、誤飲した量や赤ちゃんの体質によっては、嘔吐や湿疹などの症状がでる可能性もあります。
アルコール性の化粧水の場合は、アルコール中毒になることもあります。
化粧品は普段から使用するものですが、鍵のかかる引き出しや開け閉めのロックができる用具を利用するなど、慎重に保管を行いましょう。
・アルコール
身体の小さい赤ちゃんや子どもは、大人よりもずっと少ない量でも中毒になる恐れがあります。
少量の場合は水を飲ませ、しばらく様子をみましょう。
・アルコール中毒の症状
嘔吐、体温の低下、意識が混濁する、昏睡などで、死に至るケースもあります。
チーハイなどの缶は果物がプリントされていて、ジュースと間違い誤飲するケースもあります。
冷蔵庫や保管場所では、子どもが間違わないように手の届かない高さに置きましょう。
大人たちが美味しそうに飲んでいるのを見て、飲みたがる子どもがいるでしょう。
面白がってアルコールを飲ませてはいけません。
アルコールは成長の妨げになるものです。大人から飲酒を勧めることは絶対やめましょう。
◆ 誤嚥(ごえん)
飲み込んだものが、気管や気管支に入ってしまうことをいいます。
誤嚥がもっとも多いのは、ピーナッツなどの豆類です。
豆は他の食品などの誤飲とは異なり、体内の水分を含んで膨張します。
気管を塞ぎ、窒息などの重篤な事態になる恐れもあります。
誤嚥に気づいたらすぐに対処しましょう。
◇誤嚥の症状
・むせる、咳き込む、呼吸が苦しい、呼吸にゼーゼーなど音がする。
◇誤嚥の治療
豆類は全身麻酔をして、内視鏡で取り出します。
◇誤嚥の予防
誤嚥は予防が重要になります。
・おやつに豆類が与えない。
・子どもの手の届かないところに置く。
・床に落ちた豆は必ず拾う。
などの注意をしましょう。
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